設立趣旨

 

2006年12月に、我々はひとつの理念のもとで19世紀学学会を設立した。本Instituteは、その設立理念を19世紀学学会と共有しつつ、基本的な認識として、19世紀は大いなる変革の世紀であったという事実から出発する。 ヨーロッパでは、産業革命とフランス革命によって近代は現実のものとなった。近代が市民社会として現実化されるなかで、新しい知の体系が摸索された。その時代に、ヨーロッパでは学問の基礎としての人文学(哲学、史学、文学)が確立し、社会科学(法学、経済学)が独立・発展した。さらには自然科学が学問=科学(理学)となり、その応用(工学、農学、医学、歯学)が課題とされ、学問を社会に一般化するための教育が重要になった(教育学)。現在の大学での学問は、ほぼこの時代の学問体系を基礎として発展してきた。19世紀は偉大なる教養の世紀でもあった。

21世紀を迎えた現在、その学問体系が根本的に問い直されている。義論を生産的に行なうため、そもそも現在の学問がどのような社会のなかで、どのような課題の探求のために成立しどのように発展してきたのかを問うことを、19世紀学学会と共に、本Instituteの共通課題とする。出発点を見直すことが必要であるという率直な問題意識のもとに、19世紀に成立した学の体系について総合的に再検討することをめざし、新潟からその研究成果を世界に向けて発信することを本Instituteの活動目標とする。

国際的な研究拠点として、下記の課題を掲げ、ここに新潟大学教育研究院人文社会・教育科学系附置の研究機関として新潟大学コア・ステーションInstitute for the Study of the 19th Century Scholarshipを設立する。

1. 本Instituteは、19世紀学学会と共に、19世紀に成立した学の体系の再検討を多面的  に行なうため、以下の課題を中心にプロジェクト研究を行なう。

  1. 19世紀の社会、文化・法・芸術と学問についての基礎的研究
  2. 人文学の方法、とくに古典古代研究・宗教研究
  3. 学問(科学)方法論、教養・教育論
  4. ヨーロッパ・アメリカ、アジア・アフリカ、日本の知と学問

 

2. 本Instituteは、これら4つのプロジェクト研究において研究を推進することを通じ、19世紀に成立した学の体系を吟味し、その知の遺産を20世紀がどのように継承して  きたかを検証し、あわせて21世紀における研究の方向付けを行なう。本Instituteは、19世紀学学会と連繋しつつ、その研究成果を国際シンポジウムや研究フォーラム、本Instituteの機関雑誌を通して社会に発信し提言するため、それぞれの研究の水準向上に寄与する。

3. 本Instituteは、欧米でなく東アジアの地、新潟大学に学問的な交流の場を設け、そこから世界に向けてその成果を発信する。本Instituteのような19世紀学を中心とした研究機関は世界においても前例がなく、その事業を通して、学際的・学融合的研究の推進に直接寄与するものでありたい。本Instituteは、創造的で建設的な寄与を行なうことを意識した研究集団でありたいと願う。

2007年2月1日